
Photoshopで複雑な背景から
髪の毛を切り抜く方法【完結編】
Photoshopの画像の切り抜き方法は、用途によってたくさんのテクニックがあり、当サイトでも「 Photoshop切り抜きをマスターする10個の鉄板テクニック 完全ガイド」でご紹介しています。しかし本当に厄介なのは、街や風景など複雑な背景だったり、髪の毛の色が背景色と同じようなケースなど、これらのテクニックがうまく利用できないこともしばしば。
今回は、切り抜きを諦めてしまいそうな背景でも、髪の毛など複雑なオブジェクトをうまく切り抜く方法をご紹介します。前回同様、Photoshopの「選択とマスク」を使った切り抜きテクニックですが、より複雑な背景を得意とした裏技テクニック。
Photoshop
For Life
“THE FASTEST WAY TO CUT OUT HAIR IN PHOTOSHOP”

今回は、こちらの画像の女性モデルを切り抜きます。背景には、大海原が広がり、ところどころ白波が立っています。そして女性モデルの髪の毛も、宙に盛大に舞っています。写真をズームアップしてみると、細かく乱れた髪の毛も無数にあり、切り抜きしにくそう。

まずは切り抜きたいエリアを選択していきましょう。ツールバーより「クイック選択ツール」(ショートカット: W)などお好みのツールで大まかに選択しましょう。
メインメニューより「選択範囲」>「被写体を選択」を適用し、人工知能によって選択範囲をうまく指定できますが、このような複雑な背景での処理は苦手です。

選択範囲が決まったら、メインメニューより「選択範囲」>「選択とマスク」を選択しましょう。
表示されたプロパティボックス上で、「エッジの調整: 250px」、「スマート半径」にチェックを入れる、「グローバル調整」より「エッジをシフト: 70%」、「出力設定」より「不要なカラーを抽出」にチェックを入れ、「適用量: 69%」と順番に設定していきます。

写真をズームアップし、より細かい髪の毛の部分を「境界線調整ブラシツール」(ショートカット: R)を使ってなぞっていきしょう。こうすることで、不要な背景だけが削除されます。

「選択とマスク」を適用した様子がこちら。この段階では、背景にあった海面がまばらに残ってしまっています。

背景が透明では切り抜いた様子が分かりにくいので、背景となる写真をここで配置しておきます。よりリアルな仕上がりを目指すために、写真を拡大し一部のみを利用してみましょう。

「背景」レイヤーを選択した状態で、メインメニューより「フィルタ」>「ぼかし(ガウス)」を選択し、「半径: 5px」で適用します。こうすることで、背景のみぼやけた様子となります。

レイヤーパネル上で、作成したレイヤーマスクを選択した状態で、右クリックより「レイヤーマスクを適用」をクリックしましょう。こうすることで、画像レイヤーのみとなりました。

レイヤーパネルより作成したレイヤーのサムネイルをクリックし、選択範囲を再度指定します。
ここで、再度メインメニューより「選択範囲」>「選択とマスク」を選択し、プロパティパネルを開きましょう。これが、このテクニックの最大のポイントとなります。

表示されたプロパティボックス上で、「エッジの調整: 0px」、「スマート半径」にチェックを入れ、「グローバル調整」より「エッジをシフト: -17%」、「出力設定」より「出力先: 新規レイヤー(レイヤーマスクあり)」で新しく選択範囲を指定します。

チャンネルパネルを開くと、選択した範囲がマスクレイヤーとして保存されているのを確認できます。ここで、最終的な選択範囲を調整していきます。
よく見ると、身体の一部も選択範囲に含まれており、このままでは合成したときに透けてしまいます。ツールバーより「ペンツール」を選択し、身体の部分のみパスを引いていきましょう。
選択が完了したら、右クリックで「選択範囲を作成」を選択し、「ぼかしの半径: 0px」で適用します。

チャンネルパネル上でコピーマスクレイヤーを選択した状態で、ツールバーより「ブラシツール」を選択し、描画色「白(#ffffff)」で選択した範囲内をペイントしていきます。

メインメニューより「選択範囲」>「選択範囲を反転」(ショートカット: Shift+ Comman/Ctrl)+ I)とし、今度は描画色「黒(#000000)」で身体からはみ出てしまった選択範囲エリアをペイントしていきましょう。

チャンネルパネルのRGBレイヤーを表示・非表示にすることで、どの部分が選択範囲となっているのか、より分かりやすく確認できます。

最終レタッチとして、新規レイヤーを一番上に作成し、右クリックで「クリッピングマスクを作成」(Alt/Optionを押しながらレイヤーの中央線をクリック)しましょう。続けてレイヤーの描画モードを「色相」に設定します。

ツールバーより「スポイトツール」を選択し、髪の毛の色を抽出しましょう。続けて、ツールバーより「ブラシツール
」を選択し、ソフトブラシで選択範囲の輪郭を少しずつなぞって、ペイントしていきましょう。
こうすることで、不自然な光の反射やフリンジをうまくぼかすことができます。

ここまでで十分ですが、さらにリアル感を追求するために、もうひとつ新規レイヤーをカンバスの一番上に作成し、レイヤーの描画モードを「スクリーン」にしたら、右クリックで「クリッピングマスクを適用」に進みましょう。

再度ツールバーより「スポイトツール」を選択し、背景部分の色を抽出しながら、「ブラシツール
」のソフトブラシと切り替え、ほんの少しだけ輪郭をペイントすることで、本物そっくりの光の反射具合を表現できます。

背景に画像を合成した様子がこちら。複雑な背景からフワフワの髪の毛を見事に切り抜くことができました。

同じテクニックを利用して切り抜いたサンプル例。こちらも髪の毛一本まで切り抜きが行われています。やっぱりすごいですね、フォトショップ。

今回ご紹介した「選択とマスク」の二度使いによって、これまで諦めていたオブジェクトの切り抜きにも対応できるでしょう。以下のテクニックも参考にすることで、魔法使いのような切り抜きテクニックを手に入れましょう。