その数22万超!浮世絵を無料ダウンロードできる検索サイトがすごい ukiyo-e.org

歴史的な背景も交えた、時代別の代表作品も一緒に

 

日本の伝統的な「浮世絵」への関心は非常に高く、これまでにも世界の博物館や美術館などが無料で閲覧、ダウンロードできるデジタルコレクションの一部として公開しています。

 

今回は、世界中に散らばった日本の木版画、浮世絵を一括データベース化し、素早く検索できるようにしたサイトUkiyo-e.orgをご紹介します。

 

その数、なんと22万点以上

 

さらに、公開されている浮世絵コレクションは無料ダウンロード可能という素晴らしさ。

 

 

世界中の浮世絵をデータベース化した検索ツール Ukiyo-e.org

 

Ukiyo-e.orgは、コンピュータ・プログラマーであり、日本の木版画の熱心な愛好家、ジョン・レシグ(John Resig)(現在は、京都の立命館大学の客員研究員だそう)が作成した、イメージ・データベース検索ツールです。

 

日本や世界中の木版画の研究者を支援する目的で作成され、まさに「木版画・浮世絵専門の画像検索ツール」と言えるでしょう。

 

2012年に開設され、現在では世界中の26の美術館や博物館、大学、図書館からオークションハウス、さらには個人ディーラーから集めた223,000点の木版画、浮世絵がデータベース化されています。

 

歌川広重など浮世絵師による検索はもちろん、手持ちの浮世絵画像をアップロードすると、類似した画像を浮世絵データベースから検索することも可能です。また、時代やアーティスト別に閲覧することもでき、日本語にも対応と、浮世絵好きにはたまらない充実度となっています。

 

 

そもそも浮世絵って何?

 

浮世絵(うきよえ)」とは、江戸時代に流行した絵画スタイルで、風俗画とも言われ、当時の庶民の暮らしぶりや風俗、流行などを反映したものが基本となっています。

 

平安時代など江戸時代以前の武将たちを描いた「武将絵(ぶしょうえ)」や、女性美をモチーフに遊郭の花魁(おいらん)などの美女を描いた「美人画(びじんが)」。

 

歌舞伎役者を描いた「役者絵」、葛飾北斎の「富嶽三十六景」に代表される「名所絵」に、動物などを擬人化させた笑いのセンスを感じる「戯画」。

 

隠しテーマをもつ花や鳥を描いた「花鳥画(かちょうが)」など、さまざまな浮世絵が描かれました。

 

ゴッホやレオナルド・ダ・ビンチなど、世界的な画家たちにも影響を与えたと言われており、Ukiyo-e.orgではそんな浮世絵を歴史別、浮世絵師別に楽しむことができます。

 

ここでは、歴史的な背景も交えながら、時代別に浮世絵の代表作品を一緒にまとめています。

 

浮世絵の誕生(1700年代初期から中期)

 

絵師が描いた絵を彫って、木版で刷り上げた木版画とは異なり、絵師が筆で手描きした「肉筆画」が浮世絵のはじまり。

 

一枚ずつ手描きのため、肉筆画はとても効果で、一般庶民には高値の花で、ごく一部の富裕層が絵師に注文して制作するのが基本だったそう。

菱川師宣「見返美人図」

 

そこから木版画の技術が発達し、はじめは黒1色の版画「墨摺絵(すみずりえ)」、2〜3色使いの「紅摺絵(べにずりえ)」へと変化していく様子を楽しむことができる作品が中心に揃う年代。

 

遠近法を浮世絵に取り入れた奥村政信(おくむらまさのぶ)や、肉筆画の「見返り美人図」で知られ、「浮世絵の祖」とも言われる菱川師宣らの作品が多く揃います。

 

奥村政信「芝居狂言浮絵根元」

 

 

「錦絵」(にしきえ)の誕生(1740年代から1780年代)

 

1769年頃になると、可憐な女性を描いた「美人画」で有名な、「鈴木春信」によって生み出されたフルカラー浮世絵、木版多色摺りの 「錦絵(にしきえ)」がついに誕生。

 

鈴木春信「夕立」

 

この他にも江戸中期に活躍した浮世絵師としては、プロマイド写真の先駆けで「役者絵」を確立させた「勝川春章(かつかわ しゅんしょう)」、その弟子にあたる「勝川春英」や役者絵で知られた「勝川春好(かつかわしゅんこう)」などが挙げられます。

 

勝川春章「東扇」

 

浮世絵の黄金期(1780から1804年ごろ)

 

江戸時代の後期入ると、歌舞伎役者を描いた「役者絵」が登場。役者の個性を大胆に描いた、謎の絵師「東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)」もこの時期。デビューしてわずか10ヶ月で姿を消したそう。

 

東洲斎写楽「市川鰕蔵の竹村定之進」

 

また、当時のリアルな女性を描いた「美人画」で人気を博した「喜多川歌麿(きたがわうたまろ)」や、作品のほとんどが海外美術館に所蔵の「鳥居清長」、「細田栄之(ほそだえいし)」などの作品も数多く公開されています。

 

喜多川歌麿「寛政三美人 (当時三美人)」

 

渓斉英泉「浮世美人見立三曲)」

 

木版画・浮世絵の大衆化(1804から1868年ごろ)

 

この時期に絶大な人気を誇っていたのが、役者絵で知られる「歌川豊国(うたがわとよくに)」が率いる歌川派。美人画の「歌川国貞」、武者絵の「歌川国芳」、などの作品が登場しました。

 

歌川豊国「稲野谷半十郎 沢村源之助」

 

歌川国貞「鬼あざみ清吉)」

 

複数枚の絵をつなげると1枚になる、「続絵(つづきえ)」もこの時期に登場。

歌川国芳「夏」

 

旅行ブームに沸いていた江戸後期、日本各地の美しい風景を描いた「風景画」が人気に。世界的にも人気の高い、葛飾北斎の「富嶽三十六景」や、「歌川広重」の「東海道五十三次」などが生まれたのがこの時期。

 

歌川広重「双筆五十三次 宮 熱田駅 寝覚里 遠景」

 

葛飾北斎「富嶽三十六景 凱風快晴」

 

日本美術史上の「奇想の絵師」のひとりに挙げられる、浮世絵師「歌川国芳」が活躍。迫力満点で奇抜なアイデアの「武者絵」や、ギャグセンスたっぷりに水中の生きものをリアルに描いた「戯画・風刺画」でも知らています。

 

歌川国芳「相馬の古内裏に将門の姫君瀧夜叉妖術を以て味方を集むる大宅太郎光国妖怪を試さんと爰に来り竟に是を亡ぼす」

 

歌川国芳「源頼光公館土蜘作妖怪図

 

歌川国芳「金魚づくし」

 

参勤交代で上京した武士たちのお土産としても人気だったそうで、浮世絵はますます大衆化していきます。

 

明治時代(1868年から1912年ごろ)

 

江戸時代末期になると、ペリー来航によっておよそ250年ぶりに、長崎出島以外でも貿易のため開港。1867年には徳川幕府による大政奉還で、武士の世がついに終わりを告げます。いち早く開港した横浜港など、異国文化を感じる西洋化した街を描いた「開化絵(かいかえ)」、「横浜絵(よこはまえ)」が一大ブームに。

 

歌川貞秀「横浜異人商館之図」

 

小林清親「猫と提灯」

 

この頃の代表的な絵師としては、空を飛んでいるような俯瞰構図で風景を描いた「歌川貞秀(うたがわさだひで)」や、開化絵で知られた「歌川広重(3代)」や、「楊洲周延(ようしゅうちかのぶ)」、17歳で版画家デビューした「井上安治(やすじ)」、能版画家の「月岡 耕漁(つきおか こうぎょ)」、暴れん坊絵師「歌川芳虎(うたがわよしとら)」などが挙げられます。

 

歌川貞秀「神名川横浜華郭之光景」

 

歌川貞秀「大日本国郡名所 越後古志郡長岡」

 

1870年になると、日本で最初の日刊新聞「横浜毎日新聞」が発行され、印刷技術も発達し、1890年代には写真が普及したこともあり、1907年ごろに浮世絵はすっかり衰退してしまいます。

 

新版画・創作版画のうごき(1915から1940年代)

 

浮世絵の伝統を受け継ぎながら、海外向けの美術品として復興を目指し、大正~昭和に発展した「新版画」。その代表絵師「川瀬巴水(かわせはすい)」は、アップル・コンピュータの創業者スティーブ・ジョブズが熱心にコレクションしたことでも知られています。30~40度摺りされた、木版画とは思えない臨場感ある、リアルな作品が海外でも大変な人気に。

 

川瀬巴水「芝増上寺」

 

「最後の浮世絵師」と呼ばれた絵師のひとり「小林清親(こばやしきよちか)」、そしてその後継者「土屋光逸(つちやこういつ)」の日本の美しさを描いた作品もずらり。

 

土屋光逸「東海道富士川」

 

土屋光逸「四ツ谷荒木横町」

 

モダン・コンテンポラリーの時代(1950年以降)

 

このグループには、古典的な浮世絵からは創造もつかないようなスタイルや題材の木版画が含まれていますが、浮世絵を生んだ伝統木版技術はそのまま。サーフボードをテーマにした作品は一見違和感がありますが、広重と北斎も波をこよなく愛したという点は変わらないでしょう。

 

Tom Kristensen「36 Views of Green Island – 21」

 

Paul Binnie「蝶結び」

 

国立国会図書館が運営するNDLイメージバンクでは、レトロな大正、昭和のうっとりするような、著作権フリーの名画1900枚が無料ダウンロードできます。

 

「昭和の広重」とも称される大正新版画の川瀬巴水は、165枚もの風景版画が高画質で公開されています。

 

川瀬巴水『初秋の浦安』

川瀬巴水『初秋の浦安』 出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」

 

類似検索機能もオススメ

Ukiyo-e.orgでは、作品のほとんどが海外に流出した絵師たちの作品も見つけることができ、似た画像を自動で検索してくれる機能はとても重宝しますよ。

 

 

参考サイト・文献

浮世絵史上最大のミステリー!謎の絵師・東洲斎写楽ってどんな人? – アダチ版画研究所

浮世絵とは – 名古屋刀剣ワールド

浮世絵とは?代表作品と絵師たちをまとめて解説!基本や歴史が全部わかる – 和樂ウェブ

横浜浮世絵展の異国情緒溢れる錦絵が面白い!その不思議な魅力を徹底レポート – 和樂ウェブ

歌川芳虎 – 名古屋刀剣ワール

ブレイク前夜の「新版画」を見逃すな!浮世絵との違いや鑑賞ポイント – 和樂ウェブ

川瀬巴水と新版画の世界 – ヌーブル

北斎が先輩にひどいパワハラを受けたという話 – 太田記念美術館

世界が認めた天才! 浮世絵師・葛飾北斎ってどんな人? – アダチ版画研究所